○青森県農林水産業を基幹とする産業振興に関する基本条例
平成十三年三月二十六日
青森県条例第二号
青森県農林水産業を基幹とする産業振興に関する基本条例をここに公布する。
青森県農林水産業を基幹とする産業振興に関する基本条例
青森の地には、三内丸山遺跡が語りかける古より、四季折々の変化に富んだ美しい自然のもとで、先人が森と大地と海と共に生き、「くらしといのち」を支えてきた歴史があり、人々のたゆまぬ努力の結晶として、世界遺産である白神山地をはじめとする緑あふれる森林、津軽平野や三本木原台地に拓かれた広大な農地、三方を囲む海と中央に抱かれた陸奥湾の豊かな漁場などが受け継がれている。
これらは、豊富な農林水産物の源となり、水と土を守り、私たちに多くの恵みをもたらしている。また、農山漁村には、豊作・豊漁を祈りこれらに感謝する人々による祭りなどに由来した伝統行事、郷土色豊かな食文化、生活に根ざす工芸品などが、心の糧や優れた技として大切に伝えられ、ゆとりと安らぎに満ちたかけがえのない「ふるさと」となっている。
このような豊富な農林水産資源を生かし、環境にやさしい循環型産業への転換を図りながら、健康な「くらし」を支える安全な食料の生産・活力ある森林づくり・生き生きとした農山漁村の形成に努めていくことは、食料・環境問題を抱えている我が国さらには世界ヘ地域から貢献することにつながる重要な責務である。
このような認識の下に、豊かな農林水産資源を維持増進しながらこれを次の世代に引き継ぎ、魅力ある農林水産業の振興はもとより、その資源を活用したものづくりやこれらの観光・教育・文化・福祉への波及など、青森県らしい産業の振興を図り、「いのち」をはぐくみ心が通い合う社会づくりに資するため、この条例を制定する。
(目的)
第一条 この条例は、農林水産業を基幹として行う産業の振興(以下「農林水産業を基幹とする産業振興」という。)について施策の基本となる事項を定めることにより、農林水産業を基幹とする産業振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって本県の経済の発展及び県民の豊かで健康的な生活の向上を図ることを目的とする。
(施策の基本方針)
第二条 県は、農林水産業を基幹とする産業振興に関する施策を策定し、及びこれを実施するに当たっては、次に掲げる事項を旨として、総合的かつ計画的に行うものとする。
一 農林水産業の生産活動の場である農地、森林及び漁場を維持し、これらの生産力を増進するとともに、これらの良好な環境を保全することにより、農林水産業の持続的な発展を図ること。
二 農林水産業の生産活動が自然界における生物を介在する物質の循環に依存し、かつ、これを促進する機能を持つことから、この機能を維持増進し、人の健康を支える安全で良質であり、かつ、安心することができる農林水産物の安定的な供給を図ること。
三 農林水産資源の有効活用及び付加価値の向上等により、産業の総合的な振興を図ること。
四 農林水産業が有する国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等農山漁村で農林水産業の生産活動が行われることにより生ずる農林水産物の供給の機能以外の多面にわたる機能(以下「多面的機能」という。)の適切かつ十分な発揮を図ること。
(基本的施策)
第三条 県は、前条に定める農林水産業を基幹とする産業振興に関する施策についての基本方針にのっとり、次に掲げる施策を講ずるものとする。
一 次に掲げる農林水産業の持続的な発展及び安全で良質であり、かつ、安心することができる農林水産物の安定的な供給を図るための施策
イ 地域の特性に応じた農産物及び林産物並びに水域の特性に応じた水産物の生産の拡大に必要な措置
ロ 農林水産物に由来する有機性資源等の循環に配慮し、環境と調和した農林水産業の推進に必要な措置
ハ 需要に応じた収益性の高い農林水産物の生産の拡大に必要な措置
ニ 自然環境及び生態系に配慮した生産基盤の整備に必要な措置
二 次に掲げる農林水産資源の有効活用及び付加価値の向上等による産業の総合的な振興を図るための施策
イ 農林水産物を活用した高品質・高機能な商品の開発に必要な措置
ロ 農林水産物の生産、流通又は加工の過程において副次的に得られる物品の有効活用に必要な措置
ハ 農林水産物の流通及び加工の過程における衛生管理及び品質管理の高度化その他の安全で良質であり、かつ、安心することができる農林水産物及び農林水産物を活用した商品の流通及び加工の体制の整備に必要な措置
ニ 農林水産物及び農林水産物を活用した商品の販売の促進及び輸出の拡大に必要な措置
ホ 農林水産物及び農林水産物を活用した商品の生産から販売までにわたる総合的な支援に必要な措置
三 次に掲げる農林水産業が有する多面的機能の適切かつ十分な発揮を図るための施策
イ 農林水産業が有する国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全等の公益的機能の維持増進に必要な措置
ロ 農林水産業の生産条件の整備及び農山漁村の生活環境の整備その他の福祉の向上に必要な措置
ハ 農山漁村の景観、歴史、文化、地域特産物その他の農林水産資源等の観光への活用に必要な措置
ニ 安らぎの場の提供、生産活動を体験する機会の提供等による保健的効果、教育的効果等の発揮に必要な措置
2 県は、将来にわたり農林水産業を基幹とする産業振興を図るため、意欲と能力のある担い手の育成確保、男女がひとしく経営及びこれに関連する活動に参画する機会の確保その他必要な施策を講ずるものとする。
3 県は、農林水産業を基幹とする産業振興に資する技術の研究開発を図るため、試験研究体制の整備、県、国及び他の地方公共団体、大学、民間等の連携の強化その他必要な施策を講ずるものとする。
4 県は、農山漁村、農林水産物及び農林水産物を活用した商品等に関する理解と関心を深めるため、県内外に対する情報の提供その他必要な施策を講ずるものとする。
(施策の推進)
第四条 知事は、社会的経済的状況の変化を勘案しつつ、農林水産業を基幹とする産業振興に関する施策を推進するものとする。
(事業者の主体的な取組)
第五条 事業者は、本県の農林水産業及び農山漁村並びに農林水産業を基幹とする産業振興に関する理解を深めるとともに、その事業活動を行うに当たっては、本県の農林水産業を基幹とする産業振興に主体的に取り組むよう努めるものとする。
(県民の役割)
第六条 県民は、本県の農林水産業及び農山漁村並びに農林水産業を基幹とする産業振興に関する理解を深めるとともに、農地、森林及び漁場の利用に当たっては、これらの環境保全に積極的な役割を果たすよう努めるものとする。
(財政上の措置)
第七条 県は、農林水産業を基幹とする産業振興に関する施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
附則
この条例は、公布の日から施行する。