○青森県議会基本条例
平成二十五年六月二十八日
青森県条例第四十九号
青森県議会基本条例をここに公布する。
青森県議会基本条例
青森県は、縄文のいにしえより、自然と人間が共生した豊かな国原「北のまほろば」の中心であり、多くの先人の限りない郷土愛とたゆみない努力により今日まで発展してきた。
青森県議会は、明治十二年に初の通常県会が開催されて以来、時代の変化に即し、絶えず民意を反映する場としての大きな役割を担い続けてきた。
近年、地方分権改革の進展により、地方自治体の自己決定権と責任の範囲が拡大され、地方自治を取り巻く環境は大きく変化している。
県議会は、知事とともに県民の直接選挙により選出された県民の代表であり、二元代表制の一翼を担う存在として、その果たすべき責務及び役割はますます増大してきている。
本県議会においても、議会の効率的・効果的運営に係る議会改革に取り組んできたが、これまで以上にその役割を果たし、真の地方自治の確立を目指すためには、県民の意思を的確に把握し、県政に適切に反映させるとともに、県民に開かれ、信頼される議会の構築に一層努めなければならない。
そのためには、知事及びその他の執行機関との立場及び機能の違いを踏まえ、互いの役割を尊重しつつ、公平かつ公正な議論を尽くし、その機能を最大限に発揮する必要がある。
ここに、本県議会は、議会の基本理念を明らかにするとともに、議員の責務及び役割、議会運営の原則等の本県議会に関する基本的事項を定めることにより、県民の視点に立って、県民の負託に的確にこたえていくことを決意し、この条例を制定する。
第一章 総則
(目的)
第一条 この条例は、議会の基本理念並びに議員の責務及び役割等を明らかにするとともに、議会運営の原則等議会に関する基本的事項を定めることにより、県民の負託に的確にこたえ、もって県民の福祉の向上及び県勢の発展に寄与することを目的とする。
(基本理念)
第二条 議会は、二元代表制の下、県民を代表し、県の意思決定を担う議事機関として、県民の意思を県政に反映させるため、公平かつ公正な議論を尽くし、その機能を最大限に発揮することにより、真の地方自治の確立を目指すものとする。
(基本方針)
第三条 議会は、前条の基本理念にのっとり、次に掲げる基本方針に基づき議会活動を行うものとする。
一 議会に提出された議案の審議及び審査を行うほか、政策立案及び政策提言に取り組むこと。
二 知事及びその他の執行機関(以下「知事等」という。)の事務の執行を監視し、及び評価する機能を強化すること。
三 県民に開かれた議会運営を行うとともに、議会活動に関する県民への説明責任を果たすこと。
四 県民の意思を的確に把握し、県政に適切に反映させること。
五 地方分権の進展に対応した新たな議会の運営体制の確立を図るため、議会改革に継続的に取り組むこと。
第二章 議員の責務及び役割
(議員の責務)
第四条 議員は、県民の代表として、常に県民全体の利益を考え、県政の課題及びこれに対する県民の意思を的確に把握することにより、議会活動を通じて県民の負託にこたえる責務を有する。
(議員の役割)
第五条 議員は、前条の責務を果たすため、次に掲げる役割を担うものとする。
一 本会議、委員会(常任委員会、議会運営委員会及び特別委員会をいう。以下同じ。)及び議案の審査又は議会の運営に関し協議又は調整を行うための場(以下「会議等」という。)において、審議及び審査等を行うとともに、必要に応じて議案を提出すること。
二 知事等の事務の執行が、適正かつ公平に、及び効率的に行われているかどうかを常に監視するとともに、これが成果をあげたかどうかを評価すること。
三 県政の課題及び施策に関する情報収集、調査研究及び提言を行うこと。
四 県政について、県民に説明すること。
五 県民との意見交換等により県政に関する県民の意思を把握すること。
2 議員は、前項各号に掲げる役割を果たすために必要な資質の向上を図るため、不断の研さんに努めるものとする。
(政治倫理)
第六条 議員は、県民の負託により、県政に携わる権能と責務を有すること、自らに重大な使命と高い倫理の保持が課せられていることを深く認識し、県民全体の奉仕者及び県民の代表者としての自覚を持ち、公正、誠実及び清廉を基本として、常に品位を保持し、及び識見を養うよう努めなければならない。
第三章 議会運営の原則等
(議会運営の原則)
第七条 議会は、議事機関としての責任を深く認識し、公正かつ透明な運営に努めなければならない。
2 議会は、その機能が十分に発揮されるよう、円滑かつ効率的な運営に努めなければならない。
3 常任委員会は、県政の課題に対応して機動的に開催し、その機能を十分に発揮するよう運営しなければならない。
4 特別委員会は、社会経済情勢等の変化に伴う新たな県政の課題に対応して特に必要がある場合に設置し、その機能を十分に発揮するよう運営しなければならない。
(質問等の充実)
第八条 議員は、会議等において質問又は質疑を行うに当たっては、第四条に規定する議員の責務を自覚し、その内容の充実に努めるものとする。
(知事等による確認)
第九条 知事等は、本会議又は委員会における質問及び質疑に対して、議長又は委員長の許可を得て、答弁に必要な範囲内で質問及び質疑の趣旨を確認することができる。
(議員間の討議)
第十条 委員会は、議員相互間の討議を積極的に活用し、その機能を十分に発揮するよう努めなければならない。
第四章 県民と議会との関係
(県民の意思反映及び参加確保)
第十一条 議会は、県民の意思を的確に把握し、県政に適切に反映させるため、次に掲げる方法により、県民が議会活動に参加する機会を確保するよう努めるものとする。
一 常任委員会及び特別委員会の運営に当たり、参考人及び公聴会の制度を積極的に活用すること。
二 請願及び陳情等が提出されたときは、これらを県民等による政策提案としてとらえ、誠実に処理すること。
三 前二号に掲げるもののほか、必要に応じ県民及び市町村に係る多様な行政課題を広く把握すること。
(議会の説明責任)
第十二条 議会は、議会運営における公正性及び透明性を確保するために必要な情報を公表するとともに、議会活動を広く県民に公開し、県民に対する説明責任を果たすものとする。
(本会議及び委員会の公開等)
第十三条 議会は、議会の意思決定過程を県民に対して明らかにするため、本会議及び委員会を原則として公開するとともに、議案等に対する議員の賛否を速やかに公表するものとする。
2 議会は、県民が本会議及び委員会を傍聴しやすい環境を整備し、本会議及び委員会の公開の実効性を確保するよう努めるものとする。
3 議会は、県民に開かれた議会運営に資するため、本会議及び委員会の会議録を広く県民が閲覧できるようにするものとする。
(広報及び広聴の充実)
第十四条 議会は、県民に開かれた議会を実現するため、多様な手段を活用することにより、広報及び広聴の充実に努めるものとする。
2 議長は、議会を代表して、定例記者会見等の方法により、県政の課題に対する議会の方向性等について県民に明らかにするよう努めるものとする。
第五章 知事等と議会との関係
(知事等と議会との関係の基本原則)
第十五条 議会は、二元代表制の下、知事等との立場及び機能の違いを踏まえ、互いの役割を尊重しつつ、共通の目標である県民の福祉の向上及び県勢の発展のために努めるものとする。
(監視及び評価)
第十六条 議会は、知事等の事務の執行が、適正かつ公平に、及び効率性をもって行われているか監視するとともに、その効果及び成果について評価し、必要と認める場合には、知事等に対し、適切な措置又は対応を講ずるよう促すものとする。
(政策立案及び政策提言)
第十七条 議会は、議案の提出、決議等を通じて、積極的に政策立案及び知事等に対する政策提言を行うものとする。
第六章 議会改革の推進
(議会改革の推進)
第十八条 議会は、地方分権の進展等議会を取り巻く社会情勢の変化に対応するため、継続的に議会改革に取り組むものとする。
2 議会は、継続的な議会改革の推進に関し協議又は調整を行うための組織を設置することができる。
(広報及び広聴並びに議会図書室に関する組織)
第十九条 議会は、広報及び広聴並びに議会図書室の充実に関し協議又は調整を行うための組織を設置することができる。
第七章 議会事務局等の充実
(議会事務局)
第二十条 議会は、議会の政策立案等に関する機能の強化及び議会活動の円滑かつ効率的な実施に資するため、議会事務局の機能の強化及び組織体制の整備に努めるものとする。
2 議長は、議会事務局に専門的知識を有する職員を配置するよう努めるとともに、職員の専門性を高めるために研修等必要な措置を講ずるものとする。
(議会図書室)
第二十一条 議会は、議員の調査研究に資するため、議会図書室の充実に努めるものとする。
第八章 雑則
(他の条例等との関係)
第二十二条 この条例は、議会に関する基本的な事項を定める条例であり、議会に関する他の条例等を制定し、又は改廃する場合においては、この条例の趣旨を尊重し、この条例に定める事項との整合を図るものとする。
(条例の見直し)
第二十三条 議会は、社会情勢の変化、県民の意見等を勘案し、必要があると認めるときは、この条例の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
附則
この条例は、公布の日から施行する。