○青森県環境の保全及び創造に関する基本条例

平成八年十二月二十四日

青森県条例第四十三号

青森県環境の保全及び創造に関する基本条例をここに公布する。

青森県環境の保全及び創造に関する基本条例

目次

前文

第一章 総則(第一条―第八条)

第二章 環境の保全及び創造に関する基本的施策

第一節 施策の基本方針(第九条)

第二節 環境計画(第十条)

第三節 環境の保全及び創造のための施策等(第十一条―第二十三条)

第四節 地球環境の保全の推進等(第二十四条・第二十五条)

第三章 環境の保全及び創造のための施策の推進(第二十六条―第二十九条)

附則

私たちのふるさと青森県は、本州の最北端に位置し、三方を海に囲まれ、陸奥湾を抱え込むように東に下北半島、西に津軽半島が北方に伸び、変化に富んだ美しい海岸線を擁している。また、原生的なブナ林に覆われた世界遺産である白神山地をはじめとした緑の山々、豊かな森林にはぐくまれた水を源とする多くの清流や湖沼など豊かで美しい自然に恵まれている。

四季折々の変化に富んだ豊かで美しい自然と私たちの先人のたゆまぬ努力は、悠久の歴史の中で特色ある北国の文化をはぐくんできた。私たちは、各地に存在する縄文の遺跡、中世及び近世の城跡、寺社及び工芸品など、そして、各地の郷土色豊かな風俗慣習、民俗芸能などに心の安らぎや郷土への誇りと愛着を感ずることができる。

私たちは、このような環境から多くの恵みを受けてきたが、資源やエネルギーの大量消費と大量の廃棄物を伴う都市化の進展や生活様式の変化は、生活の利便性を高める一方で、大気、水、そして土壌の汚染をはじめとする様々な問題をもたらし、私たちの生活の安全性を脅かすとともに、地球全体の環境にも大きな影響を及ぼすようになってきた。

このような状況の中、私たちは、ふるさとに残る豊かで美しい自然とそのもたらす恵沢を後世に伝えていく責務を負っている。このため、すべての県民の参加と連携により、私たちの日常生活や事業活動と環境の調和を図りながら、豊かで美しい青森県の環境の保全と創造を目指し、さらには地球的規模の環境問題への地域からの取組を推進することを決意し、この条例を制定する。

第一章 総則

(目的)

第一条 この条例は、環境の保全及び創造について、基本理念を定め、並びに県、事業者及び県民の責務を明らかにするとともに、環境の保全及び創造に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の県民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。

(平一一条例五九・一部改正)

(定義)

第二条 この条例において「環境への負荷」とは、人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。

2 この条例において「地球環境の保全」とは、人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに県民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。

3 この条例において「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。以下同じ。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。以下同じ。)に係る被害が生ずることをいう。

(基本理念)

第三条 環境の保全及び創造は、健全で恵み豊かな環境が県民の健康で文化的な生活に欠くことができないものであることにかんがみ、広く県民がその恵沢を享受するとともに、これが将来の県民に継承されるよう適切に行われなければならない。

2 環境の保全及び創造は、多様な自然に恵まれた本県の地域特性を生かし、人と自然との調和が確保されるよう適切に行われなければならない。

3 環境の保全及び創造は、すべての者の参加と公平な役割分担の下に、すべての者が環境の保全及び創造に関する行動に自主的かつ積極的に取り組むことによって、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会が構築されることを旨として行われなければならない。

4 地球環境の保全は、人類共通の課題であるとともに県民の健康で文化的な生活を将来にわたって確保する上での課題であることにかんがみ、すべての事業活動及び日常生活において積極的に推進されなければならない。

(県の責務)

第四条 県は、前条に定める環境の保全及び創造についての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、環境の保全及び創造に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及びこれを実施するものとする。

第五条 削除

(平一一条例五九)

(事業者の責務)

第六条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、環境への負荷の低減その他環境の保全のために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

2 前項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、環境の保全及び創造に自ら努めるとともに、県が実施する環境の保全及び創造に関する施策に協力するよう努めなければならない。

(平一一条例五九・一部改正)

(県民の責務)

第七条 県民は、基本理念にのっとり、その日常生活に伴う環境への負荷の低減に努めなければならない。

2 前項に定めるもののほか、県民は、基本理念にのっとり、環境の保全及び創造に自ら努めるとともに、県が実施する環境の保全及び創造に関する施策に協力するよう努めなければならない。

(平一一条例五九・一部改正)

(青森県環境白書)

第八条 知事は、毎年、環境の状況、環境の保全及び創造に関する施策の実施状況等を明らかにした青森県環境白書を作成し、これを公表しなければならない。

第二章 環境の保全及び創造に関する基本的施策

第一節 施策の基本方針

(施策の基本方針)

第九条 県は、環境の保全及び創造に関する施策を策定し、及びこれを実施するに当たっては、基本理念にのっとり、次に掲げる事項の確保を旨として、総合的かつ計画的に行うものとする。

 人の健康が保護され、及び生活環境が保全され、並びに自然環境が適正に保全されるよう、大気、水、土壌その他の環境の自然的構成要素が良好な状態に保持されること。

 生態系の多様性の確保、野生生物の種の保存その他の生物の多様性の確保が図られるとともに、森林、農地、水辺地等における多様な自然環境が地域の自然的社会的条件に応じて体系的に保全されること。

 人と自然との豊かな触れ合いが保たれること。

 身近な緑と水辺及び優れた景観の保全及び創造、歴史的文化的資源の活用等により、潤いと安らぎのある環境が保全され、及び創造されること。

 環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会が構築されるよう、資源の循環的な利用、エネルギーの有効利用、廃棄物の減量等が促進されること。

 地球環境の保全に適切な配慮がなされること。

第二節 環境計画

(環境計画)

第十条 知事は、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための計画(以下「環境計画」という。)を定めなければならない。

2 環境計画には、次に掲げる事項を定めるものとする。

 環境の保全及び創造に関する目標

 環境の保全及び創造に関する施策の方向

 環境の保全及び創造に関する配慮の指針

 その他環境の保全及び創造に関する重要な事項

3 知事は、環境計画を定めようとするときは、あらかじめ、青森県環境審議会の意見を聴かなければならない。

4 知事は、環境計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

5 前二項の規定は、環境計画の変更について準用する。

第三節 環境の保全及び創造のための施策等

(施策の策定等に当たっての配慮)

第十一条 県は、環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及びこれを実施するに当たっては、環境計画との整合を図り、環境の保全及び創造について配慮するものとする。

(環境影響評価の推進)

第十二条 県は、土地の形状の変更、工作物の新設その他これらに類する事業を行う事業者が、その事業の実施に当たりあらかじめその事業に係る環境への影響について自ら適正に調査、予測及び評価を行い、その結果に基づき、その事業に係る環境の保全について適正に配慮することを推進するため、必要な措置を講ずるものとする。

(規制の措置)

第十三条 県は、公害を防止するため、公害の原因となる行為に関し、必要な規制の措置を講ずるものとする。

2 県は、自然環境の保全を図るため、自然環境の適正な保全に支障を及ぼすおそれのある行為に関し、必要な規制の措置を講ずるものとする。

3 前二項に定めるもののほか、県は、環境の保全上の支障を防止するため、必要な規制の措置を講ずるよう努めるものとする。

(誘導的措置)

第十四条 県は、事業者又は県民が自らの活動に係る環境への負荷の低減のための施設の整備その他の環境の保全及び創造のための適切な措置をとることとなるよう誘導するため、必要な措置を講ずるものとする。

(環境の保全に関する施設の整備等)

第十五条 県は、緩衝地帯その他の環境の保全上の支障を防止するための公共的施設の整備及び絶滅のおそれのある野生動植物の保護増殖その他の環境の保全上の支障を防止するための事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。

2 県は、下水道その他の環境の保全上の支障の防止に資する公共的施設の整備及び森林の整備その他の環境の保全上の支障の防止に資する事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。

3 県は、公園、緑地その他の公共的施設の整備その他の自然環境の適正な整備及び健全な利用のための事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。

4 県は、前二項に定める公共的施設の適切な利用を促進するための措置その他のこれらの施設に係る環境の保全上の効果が増進されるために必要な措置を講ずるものとする。

(潤いと安らぎのある環境の保全及び創造)

第十六条 県は、潤いと安らぎのある環境を保全し、及び創造するため、緑と水に親しむことのできる生活空間の整備、美しい自然景観をはじめとする優れた景観の形成、歴史的文化的資産の保全等が推進されるよう必要な措置を講ずるものとする。

(資源の循環的な利用等の促進)

第十七条 県は、環境への負荷の低減を図るため、事業者及び県民による資源の循環的な利用、エネルギーの有効利用、廃棄物の減量及び再生資源その他の環境への負荷の低減に資する原材料、製品、役務等の利用(以下「資源の循環的な利用等」という。)が促進されるよう必要な措置を講ずるものとする。

2 県は、県の施設の建設及び維持管理その他の事業の実施に当たっては、資源の循環的な利用等に率先して努めるものとする。

(環境管理の促進)

第十八条 県は、事業者が行う環境管理(事業者が、その事業活動の実施に当たって、自主的に環境の保全及び創造に関する方針及び目標を定め、その方針及び目標を達成するための計画を策定して実施し、その実施状況を点検して必要な是正の措置を講じ、並びにこれらについて客観的な監査を行う一連の取組をいう。)を促進するため、必要な措置を講ずるものとする。

(教育及び学習の振興等)

第十九条 県は、環境の保全及び創造に関する教育及び学習の振興並びに環境の保全及び創造に関する広報活動の充実により、事業者及び県民が環境の保全及び創造についての理解を深めるともにこれらの者の環境の保全及び創造に関する活動を行う意欲が増進されるようにするため、必要な措置を講ずるものとする。

(民間団体等の自発的な活動の促進)

第二十条 県は、事業者、県民又はこれらの者の組織する民間の団体(以下「民間団体等」という。)が自発的に行う緑化活動、再生資源に係る回収活動その他の環境の保全及び創造に関する活動が促進されるよう必要な措置を講ずるものとする。

(情報の提供)

第二十一条 県は、第十九条の環境の保全及び創造に関する教育及び学習の振興並びに前条の民間団体等が自発的に行う環境の保全及び創造に関する活動の促進に資するため、個人及び法人の権利利益の保護に配慮しつつ環境の状況その他の環境の保全及び創造に関する必要な情報を適切に提供するものとする。

(調査の実施及び監視等の体制の整備)

第二十二条 県は、環境の状況の把握に関する調査その他の環境の保全及び創造に関する施策の策定に必要な調査を実施するものとする。

2 県は、環境の状況を把握し、並びに環境の保全及び創造に関する施策を適正に実施するために必要な監視、巡視、観測、測定、試験及び検査の体制の整備に努めるものとする。

(放射性物質による大気の汚染等の防止についての配慮)

第二十三条 県は、環境の保全に関する施策を策定し、及びこれを実施するに当たっては、放射性物質による大気の汚染、水質の汚濁及び土壌の汚染の防止について特に配慮するものとする。

第四節 地球環境の保全の推進等

(地球環境の保全の推進)

第二十四条 県は、地球環境の保全に資する施策を積極的に推進するものとする。

2 県は、国等と連携し、環境の保全に関する調査、研究、情報の提供等を行うことにより、地球環境の保全に関する国際協力の推進に努めるものとする。

(地球環境の保全に資する行動計画)

第二十五条 知事は、県、事業者及び県民がそれぞれの役割に応じて地球環境の保全に資するように行動するための計画を定め、その普及及び啓発を行うとともに、これに基づく行動が推進されるようにしなければならない。

(平一一条例五九・一部改正)

第三章 環境の保全及び創造のための施策の推進

(国及び他の地方公共団体との協力)

第二十六条 県は、広域的な取組が必要とされる環境の保全及び創造に関する施策を策定し、及びこれを実施するに当たっては、国及び他の地方公共団体と協力して、その推進に努めるものとする。

(市町村への支援)

第二十七条 県は、市町村が環境の保全及び創造に関する施策を行う場合には、これを支援するよう努めるものとする。

(平一一条例五九・一部改正)

(県民の意見の反映)

第二十八条 県は、環境の保全及び創造に関する施策に県民の意見を反映させるため、必要な措置を講ずるものとする。

(財政上の措置)

第二十九条 県は、環境の保全及び創造に関する施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(施行期日)

1 この条例は、公布の日から施行する。

(青森県公害防止条例の一部改正)

2 青森県公害防止条例(昭和四十七年三月青森県条例第二号)の一部を次のように改正する。

〔次のよう〕略

(青森県自然環境保全条例の一部改正)

3 青森県自然環境保全条例(昭和四十八年七月青森県条例第三十一号)の一部を次のように改正する。

〔次のよう〕略

(青森県立自然公園条例の一部改正)

4 青森県立自然公園条例(昭和三十六年十月青森県条例第五十八号)の一部を次のように改正する。

〔次のよう〕略

(平成一一年条例第五九号)

1 この条例は、平成十二年四月一日から施行する。

青森県環境の保全及び創造に関する基本条例

平成8年12月24日 条例第43号

(平成11年12月24日施行)

体系情報
第4編 環境生活/第5章 環境保全
沿革情報
平成8年12月24日 条例第43号
平成11年12月24日 条例第59号