○青森県ふるさとの森と川と海の保全及び創造に関する条例

平成十三年十二月二十一日

青森県条例第七十一号

青森県ふるさとの森と川と海の保全及び創造に関する条例をここに公布する。

青森県ふるさとの森と川と海の保全及び創造に関する条例

目次

前文

第一章 総則(第一条―第四条)

第二章 ふるさとの森と川と海の保全及び創造に関する基本方針(第五条)

第三章 ふるさとの森と川と海保全地域(第六条―第十条)

第四章 ふるさとの森と川と海の保全及び創造に関する施策(第十一条―第十六条)

第五章 雑則(第十七条・第十八条)

附則

青森県は、下北半島、津軽半島、白神山地や八甲田山等の豊かな青い森が広がり、中央に陸奥湾を囲む自然美のあふれるふるさとである。春はヤマザクラや春もみじが山野を彩り、夏はハマナスの花が海岸線に香り、秋は木々の紅葉が山々を紅に染め、冬は純白の雪が林間に積もり、やがて、日本一清浄な水道の源となる。

縄文時代から、緑豊かな森から流れ出た水は、岩木川や奥入瀬川となって津軽平野や三本木原などの広大な農地を潤し、住民の暮らしを支えながら、ついに海に注ぎ、豊じようの幸をもたらす。私たちは、このような天然の水から多くの恩恵を受け、平安な生活を維持している。

これまで私たちは、ふるさとの森と川と海という自然の営みと調和を保ち、天然の水とふれあいながら地域に根ざした生活を営み、同時に文化を進めてきた。その中で、子どもたちは、裏山での虫捕りや木登り、川や海での魚釣りや水遊びを通じて、自然に触れ、命の大切さを学び、他人を思いやる優しい心をはぐくんできた。

しかし、現在の経済性や利便性を追求した社会は、森や川や海の多様な生態系を脅かし、ふるさとの環境を悪化し、人と水とのふれあいを妨げている。

一方で、こういう傾向を恐れふるさとの森や川や海を守るため、漁業者と林業者が手を携えてる植樹活動や県民による清掃活動などが活発に行われるようになっており、森と川と海という自然を大切にしようという相互理解が深まってきている。

こうした気運の下、私たちは、県民の豊かで潤いのある生活の礎となるふるさとの森と川と海を守り、これを揺るぎない形で次の世代に引き継ぐことを決意し、この条例を制定する。

第一章 総則

(目的)

第一条 この条例は、本県の森林、河川及び海岸(以下「ふるさとの森と川と海」という。)が、農林水産業の生産活動及び人の生活と結び付いて地域文化を形成していることにかんがみ、ふるさとの森と川と海の保全及び創造に関する県、県民及び事業者の責務を明らかにし、ふるさとの森と川と海の保全及び創造に関する施策の基本となる事項を定めるとともに、ふるさとの森と川と海の保全及び創造に関する措置について必要な事項を定めることにより、ふるさとの森と川と海の保全及び創造を図り、もって県民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。

(県の責務)

第二条 県は、ふるさとの森と川と海の保全及び創造に関する総合的かつ広域的な施策を策定し、及びこれを実施するものとする。

(県民の責務)

第三条 県民は、ふるさとの森と川と海の保全及び創造に取り組むよう努めるとともに、県が実施するふるさとの森と川と海の保全及び創造に関する施策に協力するよう努めなければならない。

(事業者の責務)

第四条 事業者は、その事業活動を行うに当たり、ふるさとの森と川と海の保全及び創造に取り組むよう努めるとともに、県が実施するふるさとの森と川と海の保全及び創造に関する施策に協力するよう努めなければならない。

第二章 ふるさとの森と川と海の保全及び創造に関する基本方針

(基本方針)

第五条 知事は、すべての者の参加の下にふるさとの森と川と海ができる限り自然の状態で維持されることを基本として、ふるさとの森と川と海の保全及び創造に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。

2 基本方針には、次に掲げる事項を定めるものとする。

 ふるさとの森と川と海の保全及び創造に関する基本構想

 ふるさとの森と川と海保全地域(以下「保全地域」という。)に関する基本的な事項

 その他ふるさとの森と川と海の保全及び創造に関する重要な事項

3 知事は、基本方針を定めようとするときは、あらかじめ、青森県ふるさとの森と川と海保全創造審議会(以下「審議会」という。)の意見を聴かなければならない。

4 知事は、基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

5 前二項の規定は、基本方針の変更について準用する。

第三章 ふるさとの森と川と海保全地域

(保全地域の指定)

第六条 知事は、自然環境が優れた状態を維持している森林、河川又は海岸の区域(これらと一体となって自然環境を形成している土地の区域を含む。)のうち、ふるさとの森と川と海の保全を図る上で特に重要と認められる区域を保全地域として指定することができる。

2 知事は、保全地域の指定をしようとするときは、あらかじめ、関係する国有林野の管理者、河川管理者及び海岸管理者、関係市町村並びに審議会の意見を聴かなければならない。この場合においては、次条第一項に規定する保全計画の案についても、併せて、その意見を聴かなければならない。

3 知事は、保全地域の指定をしようとするときは、あらかじめ、その旨を公告し、その案を当該公告の日から一月間縦覧に供しなければならない。

4 前項の規定による公告があったときは、当該公告に係る保全地域の住民及び利害関係人は、同項の縦覧期間満了の日までに、縦覧に供された案について、規則で定めるところにより、知事に意見書を提出することができる。

5 知事は、保全地域の指定をするときは、その旨及びその区域を告示しなければならない。

6 保全地域の指定は、前項の規定による告示によりその効力を生ずる。

7 第二項前段及び前二項の規定は保全地域の指定の解除及びその区域の変更について、第二項後段第三項及び第四項の規定は保全地域の区域の拡張について準用する。

(保全計画)

第七条 知事は、保全地域の指定をするときは、当該保全地域におけるふるさとの森と川と海の保全に関する計画(以下「保全計画」という。)を定めなければならない。

2 保全計画には、次に掲げる事項を定めるものとする。

 保全すべきふるさとの森と川と海の特質その他ふるさとの森と川と海の保全に関する基本的な事項

 ふるさとの森と川と海の保全についての施策に関する事項

3 知事は、保全計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

4 前条第二項前段及び前項の規定は、保全計画の廃止及び変更について準用する。

(特定行為の届出)

第八条 保全地域において次に掲げる行為(以下「特定行為」という。)をしようとする者は、当該特定行為に着手する日の五十日前までに、規則で定めるところにより、特定行為の種類、場所、施行方法、着手予定日その他規則で定める事項を知事に届け出なければならない。

 土石(砂を含む。)の採取

 工作物の新築、増築、改築、移転又は撤去

 土地の掘削その他土地の形状を変更する行為(前二号に規定する行為のためにするものを除く。)

 竹木その他規則で定める物の伐採

2 前項の規定は、次に掲げる行為については、適用しない。

 非常災害のために必要な応急措置として行う行為

 通常の管理行為又は軽易な行為のうち、ふるさとの森と川と海の保全に支障を及ぼすおそれがないもので規則で定めるもの

 法令に基づく許可、認可、届出等を要する行為のうち、ふるさとの森と川と海の保全に支障を及ぼすおそれがないもので規則で定めるもの

 国又は地方公共団体が行う行為

 農業、林業又は漁業を営むために行う行為

 自己の居住の用に供する住宅の新築、増築、改築、移転又は撤去

 保全地域が指定され、又はその地域が拡張された際、当該指定又は拡張に係る地域内において着手している行為又は当該指定若しくは拡張の日から起算して五十日以内に当該指定若しくは拡張に係る地域内において着手する行為

 その他規則で定める行為

3 第一項の規定による届出をした者は、当該届出に係る事項のうち規則で定める事項を変更しようとするときは、当該変更に係る特定行為に着手する日の五十日前までに、規則で定めるところにより、その内容を知事に届け出なければならない。ただし、次条第一項の規定による指導又は同条第三項の規定による勧告に従うことにより変更を生ずるときは、この限りでない。

4 知事は、第一項又は前項の規定による届出(以下「特定行為届」という。)をしなければならない者が特定行為届をしないで特定行為に着手したときは、その旨を公表することができる。

5 知事は、前項の規定による公表をしようとするときは、あらかじめ、当該公表に係る者に口頭で意見を述べ、又は意見書を提出する機会を与えなければならない。

(特定行為に係る指導等)

第九条 知事は、特定行為届があった場合において、当該特定行為届に係る特定行為がふるさとの森と川と海の保全に支障を及ぼすと認めるときは、当該特定行為届をした者に対し、書面により、ふるさとの森と川と海の保全のために必要な措置を講ずるよう指導することができる。

2 前項の規定による指導は、特定行為届があった日から起算して三十日以内にしなければならない。

3 知事は、第一項の規定による指導を受けた者が当該指導に従わない場合において、ふるさとの森と川と海の保全を図る上で著しい支障があると認めるときは、書面により、当該指導に従うよう勧告することができる。

4 前項の規定による勧告は、特定行為届があった日から起算して五十日以内にしなければならない。

5 知事は、第三項の規定による勧告をしようとするときは、あらかじめ、その者に口頭で意見を述べ、又は意見書を提出する機会を与えなければならない。

6 知事は、第三項の規定による勧告をしようとするときは、あらかじめ、審議会の意見を聴かなければならない。この場合においては、前項の意見又は意見書の内容を審議会に報告しなければならない。

7 知事は、第三項の規定による勧告を受けた者が当該勧告に従わないときは、その旨及び当該勧告の内容を公表することができる。

(無届特定行為者に係る措置)

第十条 知事は、特定行為届をしないで特定行為に着手した者(以下「無届特定行為者」という。)に対し、当該特定行為の種類、施行方法、施行日程その他必要な事項について報告を求めることができる。

2 知事は、前項の報告等により無届特定行為者に係る特定行為がふるさとの森と川と海の保全に著しい支障を及ぼすと認めるときは、当該無届特定行為者に対し、書面により、ふるさとの森と川と海の保全のために必要な措置を講ずるよう勧告することができる。

3 前条第五項及び第六項の規定は前項の規定による勧告をしようとする場合について、同条第七項の規定は前項の規定による勧告を受けた者が当該勧告に従わなかった場合について準用する。

第四章 ふるさとの森と川と海の保全及び創造に関する施策

(ふるさとの森と川と海の保全及び創造に資する施策)

第十一条 県は、ふるさとの森と川と海の保全及び創造に資するため、地域の特性に応じた樹種の植栽、動植物の生息地及び生育地の保全、人と自然との豊かな触れ合いの確保等を考慮した森林、河川及び海岸の一体的な整備その他の必要な施策を講ずるものとする。

(啓発)

第十二条 県は、県民及び事業者のふるさとの森と川と海の保全及び創造についての関心と理解を深めるため、学習の機会の提供、教育用の資料の提供、広報活動の充実等必要な措置を講ずるものとする。

(ふるさと環境守人)

第十三条 知事は、ふるさとの森と川と海の保全及び創造について理解と熱意を有する者のうちから、ふるさと環境守人を委嘱することができる。

2 ふるさと環境守人は、ふるさとの森と川と海の保全に係る巡視活動並びにふるさとの森と川と海の保全及び創造に関する啓発活動を行うものとする。

(民間団体等の自発的な活動の促進)

第十四条 県は、県民、事業者又はこれらの者の組織する特定非営利活動法人その他の民間の団体が自発的に行うふるさとの森と川と海の保全及び創造に関する活動が促進されるよう必要な措置を講ずるものとする。

(市町村への支援)

第十五条 県は、市町村がふるさとの森と川と海の保全及び創造に関する施策を実施する場合には、必要な助言及び協力その他の支援措置を講ずるものとする。

(財政上の措置)

第十六条 県は、ふるさとの森と川と海の保全及び創造に関する施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

第五章 雑則

(国への要請等)

第十七条 知事は、ふるさとの森と川と海の保全及び創造を図るため必要があると認めるときは、国に対し必要な措置を講ずるよう要請し、及び他の地方公共団体に協力を求めるものとする。

(施行事項)

第十八条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

(施行期日)

1 この条例は、公布の日から施行する。ただし、第三章の規定は、平成十四年四月一日から施行する。

(青森県附属機関に関する条例の一部改正)

2 青森県附属機関に関する条例(昭和三十六年一月青森県条例第十四号)の一部を次のように改正する。

〔次のよう〕略

(特別職の職員の給与に関する条例の一部改正)

3 特別職の職員の給与に関する条例(昭和二十七年九月青森県条例第三十九号)の一部を次のように改正する。

〔次のよう〕略

(特別職の職員の旅費及び費用弁償に関する条例の一部改正)

4 特別職の職員の旅費及び費用弁償に関する条例(昭和二十七年九月青森県条例第四十三号)の一部を次のように改正する。

〔次のよう〕略

青森県ふるさとの森と川と海の保全及び創造に関する条例

平成13年12月21日 条例第71号

(平成13年12月21日施行)

体系情報
第11編 県土整備/第3章 河川砂防/第1節
沿革情報
平成13年12月21日 条例第71号